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カギムシとは

出典:Sampaio-Costa et al. (2009), Zoologia, Vol.26(3), 553-561
カギムシは

・陸上で暮らす無脊椎動物です。
・ムシといっても昆虫ではありません。
・節足動物でもありません。
・多数の短い肢を持っています。
・漢字で書くと「鉤虫」です。肢の先にある1対の鉤爪が名前の由来です。
・乾燥に弱いため、石や落ち葉の下などの湿った場所に棲んでいます。
・小さな種では1cm程度、大きな種では15cm以上あります。
・口の左右にある突起から粘液を噴射することができます。
・中南米、南アフリカ、オセアニアを中心に、広く分布しています。
・世界で約180種が発見されていて、今なお新種が発見されています。

出典:Oliveira et al. (2012), ZooKeys, Vol.211, 1-70
※上図の丸印は、カギムシの正基準標本(≒新種の発表に使った個体)の産地を示します。
青丸はカギムシ科の種、赤丸はミナミカギムシ科の種です(2つの科の説明は後述)。
分類の話

 生物は現在、「界・門・綱・目・科・属・種」という7つのカテゴリーを用いる方法で分類されています(※1)。
たとえば、人間は「動物界・脊椎動物門・哺乳綱・霊長目・ヒト科・ヒト属・サピエンス種」と記すことができます。
鳥類は「脊椎動物門・鳥綱」に分類される動物のことで、昆虫は「節足動物門・昆虫綱」に分類される動物のことです。
そしてカギムシは、「有爪動物門」に分類されている動物の総称です。



カギムシの分類

 さて、カギムシは現在、有爪動物門の1綱1目に属する、2つの科のどちらかに分類されています(下図)。

上図で綱・目の学名(アルファベット)を示していないのは、頻繁に名前が変わっているためです(※2)。
定着している和名も無いようなので、当ウェブサイトでは「カギムシ綱・カギムシ目」で通しています。

 2つの科はPeripatidaeとPeripatopsidaeで、それぞれカギムシ科ミナミカギムシ科の和名を持ちます。
以下に挙げるのが、カギムシ科とミナミカギムシ科の大雑把な違いです。
カギムシ(ペリパトゥス)科
Peripatidae
  ミナミカギムシ(ペリパトプシス)科
Peripatopsidae
薄茶色や茶褐色 体の色 青色や緑色
赤道付近 生息地 南半球
とても多い 肢の数 多い
2科には形態上の専門的な差異もありますが、ここでは省きました。


カギムシの特徴

・やや扁平な円筒状の体に、一対の触角と多数のいぼ状の肢を持っています。
・体表は、薄く柔軟性のあるクチクラで覆われています。
 クチクラ表面の細かな突起がビロード(velvet)のように見えることから、velvet-wormという英名があります。
・気門を閉じることができないため、乾燥に弱く、多くの種は石や落ち葉の下といった湿った場所を好みます。
・触角の基部の内側に一対の眼を持ちます。眼が退化している種もいます。
・脚の本数は種によって異なります。雌雄差や個体差のある種もいます。

・肉食性または雑食性です。ミミズや昆虫、朽木などを食べます。
・口の左右にある突起から「にかわ」に似た成分の粘液を噴射することができます。
 防御や捕食に役立っているようです。

・雌雄異体です。
・卵生や卵胎生の種に加え、栄養胞や胎盤を形成する胎生種もいます。
・いくつかの種では、幼若個体の保護や養育(つまり子育て)を行います。


カギムシ学の歴史

・1826年、L. Guildingによってカリブ海のウィンドワード諸島(Saint-Vincent島)で発見される。
 「脚を持つナメクジ」と考えられ、軟体動物門に分類される。
・1853年、肢先に鉤爪を持つことから、Onychophora(有爪類)という名称を与えられる。
 内部解剖の結果から「ヒルの仲間」と考えられ、蠕虫類に分類される(Grube,1853)。
・1873年、気管で呼吸することが明らかとなる。
 原気管類(Protracheata)として節足動物門に分類される(H. N. Moseley, 1874)。
・1905-1907年、E. L. Bouvierによってカギムシのモノグラフ(分類学の総説)が発表される。
・1947年(〜2000年代)、ユニラミア仮説の議論の中で注目される。
・1949年、L. Cuénotの動物学の総説の中で取り扱われる。
・1967年、中山書店から「体節・環形・有爪・緩歩・舌形動物 動物系統分類学6」が出版される。
 加藤光次郎博士によってCuénotの総説になぞらえて執筆される。
・1975年、S. B. Peckによって新熱帯区のカギムシ科の分類学的改訂が行われる。
・1985年、H. Ruhbergによって世界のミナミカギムシ科のモノグラフが発表される。
・1996年、A. L. Reidによってオーストラリアのミナミカギムシ科のモノグラフが発表される。
 41新種を含む64種の記載が行われる。
・2000年、中山書店から「追補版 動物系統分類学」が出版される。
・2012年、I. S. Oliveiraらによって現存する全てのカギムシ種の確認リストが改訂される。

・現在では独立の門(有爪動物門)に分類する説が有力。

・環形動物的な特徴(関節のない脚や平滑筋)と節足動物的な特徴(脱皮や開放血管系)を併せ持つことから、
 2つの動物群を結ぶ「ミッシングリンク」ではないかと言われてきた。
・近年の分子系統解析からは、「節足動物の祖先から早い段階に分岐した動物群」という説が支持されている。
 このため、緩歩動物(クマムシ)と共に「側節足動物」と呼ばれることもある。


カギムシの今

 他の動物門の系統に関する議論の中に登場することはありますが、カギムシの生態や分類を扱った研究はあまり行われていないようです。

 カギムシは、狭い地域に生息する固有種の多い動物です。
移動能力が低いため、生息地が失われればすぐに絶滅してしまうと考えられます。
ジャマイカのSpeleoperipatus spelaeus や南アフリカのOpisthopatus roseus など、すでに絶滅危惧種に指定されているカギムシもいます。
熱帯・亜熱帯の森林が減少していく中、人知れず絶滅していくことが危惧されます。


注釈

※1 「界・門・綱・目・科・属・種」の他に、必要に応じて「上〜」「亜〜」というカテゴリーが設けられることがあります。
たとえば「上科」は科の上、「亜科」は科の下に設けられるカテゴリーです。
【分類階級早見】:界・門・亜門・上綱・綱・亜綱・区・上目・目・亜目・上科・科・亜科・族・亜族・属・亜属・上種・種・亜種

※2 有爪動物門にはカギムシの他に古生代の化石動物が分類されており、それらの綱・目と区別する目的で、 たびたび新しい綱名・目名が提唱されているようです。


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